やわらかさの触りくらべ
感性素材「αGEL」の感触見本帖
HAPTICS OF WONDER 12触αGEL見本帖は、人間のからだ全体で感じる感覚「触覚(HAPTICS)」に着目して構成された、マテリアルの体感キットです。
本キットでは、タイカの開発するαGEL(シリコーンゲル)が備えもつ「やわらかさ」の魅力に注目し、人の感性に訴える12“触”のゲルについて、特徴と特性を織り交ぜて紹介しています。
ひとたびゲルを手に取り比べてみれば、あら、不思議。
こんなにも多様な触感があることに気がつくことでしょう。
マップとゲルとの組合わせで、「やわらかさ」を取り入れた、あなたならではのデザインや発想をサポートします。
ぜひ、触り比べてみてください。
αGELはタイカが独自に開発したやわらかいゲル状素材で、優れた衝撃吸収性、防振性、温度特性、耐久性をもち、スポーツ、自動車、産業機器、エレクトロニクス、介護といった幅広い分野で採用されています。
多様な機能を付与できる為、熱対策、防水・防塵、オプティカルボンディングなど様々なソリューションを実現し、AIやIoT、宇宙開発といった先端技術にも応用されています。
αGELは、用途に応じて異なる原料が使われますが、共通して高分子であること、架橋していること、溶媒があることの3つの特徴を持っています。硬度は架橋密度、溶媒量、添加物によってコントロールされ、反発性は分子構造、溶媒量や添加物などの因子で変化します。
ゲルを水平方向になぞる「併進運動」で得られる触感(横軸)と
ゲルを垂直に押し込む「押し込み動作」で得られる触感(縦軸)をもとにマッピングしています。
MAPに触れて触覚を体験しよう
アスカーCは針入度試験で測るよりも硬い材料の硬さを測定するための測定器です。アスカーC:1は、アスカーC硬度計で測定した値が1ということを意味し、数字が大きいほど硬い材料であることを示します。
材料の硬さを表す値です。規定重量の針を試料中に垂直に貫入させ、その深さを測定します。針入度:1は1/10mmを意味し、数字が大きいほど柔らかい材料であることを示します。
所定質量・高さの落下物を試験片に衝突させた際の、物体の落下時の高さに対する跳ね返りの比率を示します。
南澤先生、
「HAPTICS OF WONDER 12触αGEL見本帖」
の可能性ってなんですか?
南澤孝太
プロジェクト監修
慶應義塾大学大学院
メディアデザイン研究科 教授
「触覚(HAPTICS)」と聞くと「手でモノに触れた時に得る感覚」と思われるでしょう。しかし、HAPTICSとは触れることのみならず、触れられることや自身の運動を含め「自身と外界との関係性を認識する感覚全般」を指します。例えば、モノに触れて〝質感〟を感じとることや、スイッチを押しているという〝実感〟、握手によって信頼感が増すといった〝情感〟にいたるまで広く含まれます。
皮膚感覚に関する触覚研究では主に、圧力や振動、温度の知覚メカニズムとその再現の研究が行われています。近年、こうした感覚を数値化する研究に加え、見た目の印象や、記憶や経験といった感性的な情報を加味し、ひとが対象をどう認知しているかを探る研究にも注目が集まっています。ひとの感覚を複合的に捉えることで、触覚の可能性が広がると考えられているのです。
「触覚からどのようなコンテクストを想起するか」という視点も大切です。私たちがリラックスしたい時に自然の映像や静かな音楽を流すのは、その「情報」を得たいのではなく、癒しの「感覚」を得たいからですよね。こうした行動のなかに、触覚に基づくデザインの可能性があると考えています。
今回扱ったシリコーンゲルがもつ最大の特徴「やわらかさ」は、触覚研究で特に再現が難しい領域です。同時に、この「やわらかさ」は、幼少期の体験から心地良さや愛着を想起させることが多いものでもあります。こうした原体験をうまく引き出し、コンテクストとともに設計することで、「触覚のデザイン(HAPTIC DESIGN)」という新たな可能性が切り拓かれると期待しています。
※クロスモーダル(多感覚統合) : 五感が相互に影響を及ぼしあう現象
早川智彦, 松井茂, 渡邊淳司「オノマトペを利用した触り心地の分類手法」,『日本バーチャルリアリティ学会論文誌』15(3),2010./ 渡邊淳司, 加納有梨紗, 清水祐一郎, 坂本真樹, 「触感覚の快・不快とその手触りを表象する オノマトペの音韻の関係性」,『日本バーチャルリアリティ学会論文誌』16(3),2011./ Maki Sakamoto, Junji Watanabe. “Bouba/Kiki in Touch: Associations Between Tactile Perceptual Qualities and Japanese Phonemes”. Frontiers in Psychology,(9)295,2018.
主催:株式会社タイカ
監修:HAPTIC DESIGN PROJECT (南澤孝太 慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科・教授、
金箱淳一 神戸芸術工科大学・助教)
プロダクトデザイン:BARAKAN DESIGN
グラフィックデザイン:Beach
Webデザイン:Yusuke Okabe
コーディング:Masashi Haraguni
写真:Tsunaki Mizunoya
協力:株式会社ロフトワーク