ポジショニングをしていますか?
床ずれ対策はマットレスだけでは不十分です。
マットレスだけでは不十分な理由。
右の表のように、床ずれリスクを持っている方の2人に1人が「関節拘縮」です。関節拘縮や円背の方の場合、マットレスとの接触面積が小さく、自分の体重が局所に集中してしまいます。その為、マットレスを使用するだけでは十分な体圧分散ができず、床ずれになる危険は高いままです。
ポジショニングを行えば、マットレスとの接触面積が増え、十分な体圧分散が可能になります。
※下の表は左右にスワイプしてご覧ください。
褥瘡対策危険因子保有者
基本的動作能力 (ベッド上) |
病的骨突出 | 関節拘縮 | |
病院(療養型病床有り) (n=804) |
675(84.0%) | 404(50.2%) | 405(50.4%) |
介護老人福祉施設 (n=261) |
184(70.5%) | 61(23.4%) | 150(57.5%) |
介護老人保健施設 (n=359) |
253(70.5%) | 110(30.6%) | 171(47.6%) |
訪問看護ステーション (n=359) |
620(80.4%) | 291(37.7%) | 440(57.1%) |
(出典:褥瘡予防・管理ガイドライン/日本褥瘡学会)
四肢拘縮、円背の方の場合
- マットレスのみ
- マットレス + ポジショニング
ポジショニングとは
ポジショニングとは、床ずれ防止や関節拘縮の緩和、摂食・嚥下や呼吸など身体機能の活性化、
ストレス軽減などを目的に体位変換や良肢位保持を行うことです。
体圧分散式マットレス+ポジショニングで、療養者の心身に良い状態を作りましょう。
ポジショニングの役割
- ポジショニング前
-
- 緊張が高い/変形がある
- ポジショニング
-
- 体圧を分散する
- 身体を支える
- ポジショニングの目的
-
- ・快適な姿勢を作る
- ・関節拘縮を緩和する
- ・床ずれを防止する
- ・食事や呼吸を
しやすくする - ・リラックスする
- ・しっかり排泄する
- など
専門家に
聞きました
- 高齢者生活福祉研究所
所長(理学療法士) - 加島 守 さん
- ポジショニングをしましょう。
- ポジショニングは、自力で除圧困難な人の予防のために行いますが、介助者一人で体位変換が可能であることも必要になります。ポジショニングの種類には、安楽肢位(リラックス・快適性)、リクライニング(摂食、コミュニケーション、呼吸・循環器への刺激)、片麻痺の方へのポジショニング(筋緊張抑制、可動域の確保)があります。ポジショニングの原則は、圧の再分配・リラックス・筋緊張抑制などの目的に合わせることであり、体位を変えればよいということではありません。そのためには、体位変換という作業を行うのではなく、ポジショニングの目的に合わせた体位が取れているかどうかの観察と判断が重要です。そして必要に応じて圧抜き※をします。ポジショニングをすることによって、床ずれを防止し、快適な生活を送ることができるようにしましょう。
- ※圧抜き:クッションと身体の間に手を入れてひとなですること。残ったずれ力を取り除き、緊張緩和に効果的です。
ポジショニングの手順
- 療養者の身体を将来どのようにしたいかを考えて実施しましょう。
- クッションの中材が動いて身体にフィットし、その形が保てるものを選びましょう。
- 身体が寝具から浮いている箇所に土台を作って、しっかり体重が乗るようにしましょう。
- クッションの裾野を広げて広い面積で体重を受けるようにしましょう。
- ポジショニング後は圧抜き(クッションとカラダの間に手を入れてひとなでする)をしましょう。 残ったずれ力を取り除き緊張緩和に効果的です。
- ポジショニングは状態を見て、見直しましょう。
身体の重さの支え方を考えるポジショニング。
快適な姿勢で健康的な暮らしを目指しましょう。
全身(仰臥位)のポジショニング
身体の重さをどこで支えているかを確認する
拘縮のために、頭部の重さを胸部で、胸部の重さも胸部で支えている。
また、大腿部の重さを臀部で、下腿の重さを足部で支えている。
身体の重さをどこで支えるべきかを確認する
身体の重さを、本来支えるべき場所で支えるためにはどこで支えれば
よいのかを考える。
- 部位ごとにしっかり重さを支える
- 局所の圧を取り除き負担をなくすために、頭部、胸部、大腿、下腿、それぞれの重さを
その部位で支えるようにクッションを敷き込む。 骨盤・骨格のゆがみが改善され、
体軸も真っすぐになっていることを確認する。
下肢のポジショニング
- 身体の重さをどこで支えているかを確認
- 可動性や重さを支えている箇所を確認する。どこで支えるべきか、どこまでクッションを敷き込むかを考える。股関節の可動性、大腿部下の隙間も確認する。
- ポジショニング
-
大腿部の重さを臀部で支えずに、大腿部でしっかり受けるためには、大腿部、特に中枢部(臀部に近い側)で支えることが大切。クッションをしっかり臀部近くまで敷き込む。
重さがクッションに乗りやすくなるように、大腿部に上から軽く圧をかけ、コロコロと回旋させるようにして(内外旋)クッションになじませる。
重さをクッションでしっかり受けるためには、深さ(どこまで敷き込むか)と高さ(クッションの厚み)が重要。それらは手で確認する。
上肢のポジショニング
- 身体の重さをどこで支えているかを確認
- 拘縮のある上肢のポジショニングを考える際には、まずは可動性や重さをどこで支えているかを確認する。関節を無理矢理引っ張らずに、回旋(外旋)を入れるように優しく開き、腕だけでなく肩全体の重さや、どこで重さを支えているかを確認する。
- ポジショニング
- ブーメラン型やくさび形など、肩の奥まで入り、肩から腕全体が乗りやすいクッションを使用する。重さを支えている部分までしっかり敷き込む。
重さがクッションに乗りやすくなるように、上腕・前腕に上から軽く圧をかけ、コロコロと回旋させるようにして(内外旋)クッションになじませる。
頭部のポジショニング
- 身体の重さをどこで支えているかを確認
-
①頭部だけを支えても
重さを感じない。 -
②胸部を支えてはじめて頭部の
重さを感じることができる。
- ポジショニング
- クッションを深く、重さがかかっているところまで敷き込み、頭部・胸部全体で支える。
頭部が過屈曲・過伸展していたり、誤嚥の心配があるなど頭部を後方で支えることが困難な場合、身体全体に若干の角度を付けて、頭部を側方で受けるようにすると、胸部に重さがかからない。
参考文献:「モーションエイド」下元佳子著 中山書店
2015年発行
ウェルピーの使い方のポイント
1.ジャンボ
●頭部から背中まで包み込むように支えられる大きなサイズです。
●上体に拘縮や円背がある方の上体のポジショニングに向いています。
- 使い方
- クッションを深く、重さがかかっているところまで
敷き込み、頭部・胸部全体で支える。
- 悪い例
-
頭部を頭部だけで
支える。クッションの高さが
高すぎる。クッションが十分に敷き込まれていない。
2.ピロー
●身体のラインに合わせやすい長方形の大きなサイズです。
●側臥位時のポジショニングや、下肢拘縮がある方のポジショニングに向いています
- 使い方
- ①側臥位のポジショニングの場合、クッションを深く、重さがかかっているところまで差し込み、背部および臀部・大腿部で支える。
- ②下肢拘縮のポジショニングは、「3.ウェーブ、ウェーブ(ロング)」をご参照ください。
- 悪い例
-
膝の下で支えている。
膝で挟んでいる。
股関節が内旋したままである。
3.ウェーブ、
ウェーブ(ロング)
●ステッチ部分で脚のような丸い箇所を包み込みます。
●膝関節に拘縮がある方のポジショニングに向いています。
- 使い方
-
①大腿部でしっかり重さを受けるためには、大腿部、特に中枢部(臀部に近い側)で支えることが大切。クッションをしっかり臀部近くまで敷き込む。
②クッションの下に手を入れ、手の平を上部に持ち上げるようにし、上から軽く押したときに、下の手にしっかり重さを感じる高さにする。
- 悪い例
- ●脚がステッチから外れている。
- ●高さが低いため下肢の重さがクッションに乗っていない。
4.ブーメラン(大)(小)、
ビーン
●カーブしているので、腕やひじなど可動する部位にフィットします。
●仰臥位で頭部と肩甲帯が支えられます。
●色々なポジショニングに使える便利なクッションです。
- 使い方
-
①上肢のポジショニングの場合、肩甲帯から敷き込み腕全体が乗るように使用する。車いす上で身体が傾いてしまう場合も同じように使用する。
②頭部のポジショニングの場合、両端を肩甲帯まで敷き込み、頭部・胸部全体を支える。
③ベッドアップ時の前ずれ防止の場合は、大腿部の付け根にしっかり差し込み、上体の重さを支える。
④車いす上で腕の緊張を落したい場合は、大腿部の上にクッションを置いて腕を乗せて使用する。
- 悪い例
-
クッションが肩甲帯まで敷き込まれて
いないため、上腕部を支えていない。
5.スティック(大)(小)
●くさび形なので、奥まで敷き込みやすく、身体にフィットします。
●色々なポジショニングに使える便利なクッションです。
- 使い方
-
①車いす使用時の座位安定に使用する場合は、くさび形を背中の丸みに合わせて使用する。
②足部の内外施予防や、かかとの床ずれ防止に使用する場合は、足底全体を支えるように使用する。
③仙骨部の骨突出を保護したい場合、委縮した臀筋部分をおぎなうように使用する。
- 悪い例
- 股関節に敷き込んでいないため、股関節が外旋したままになっている。
6.ミニ
●小さくて弾力があるので、ポジショニング
時の高さ調節などに向いています。
- 使い方
-
高さ調整に使用する場合、現在使っているクッションの下に敷き込んで使用する。
- 悪い例
- 使用しているクッションと身体の間に小さなクッションを敷き込んでいる。
- ●クッションを敷き込んだら、身体の重さが乗りやすくなるように身体の上から軽く圧をかけ、コロコロと回旋させるようにしてクッションになじませましょう。
- ●ポジショニング後は必ず圧抜き(クッションと身体の間に手を差し込んでひとなでする)をしてください。
- ●ここでご紹介したポジショニングはごく一部ですので、より理解を深めるためには実習セミナーに参加されることをお勧めします。
参考文献:「モーションエイド」下元佳子著 中山書店
2015年発行